最近、地球温暖化の話題を聞くことが少なくなってきたような気がする。高速道路を車で埋めて、温暖化ガスを増やしても非難の声も上がらないというのも、困ったものだ。水を張った田で、田植えをしていても例年になくカエルの姿が少ない。温暖化の影響なのかカエルツボカビ症の影響なのかは分からないが、その静かな水田に恐怖を感じてしまった。気の小さい私だけかもしれないが、どうも、日本の人は「地球温暖化」を旬の話題ととらえなくなったらしい。しかし、生物界は着実に大量絶滅時代を迎えようとしているようだ。
たとえば、今年の5月の天候も異常だったが、異常気象という言葉も鮮度を失い、人々の口に登らなくなってきている。異常の常態化が進んでいるのだろう。6月1日の毎日新聞によれば
気象庁は1日、5月の天候まとめを発表した。東日本の太平洋側以外は全国的に降水量が少なく、特に西日本太平洋側は平年の41%で観測史上最少となった。一方、月平均気温は沖縄・奄美を除いて高く、北日本は平年比プラス1.5度で、観測史上最高タイを記録した。・・・10地点で観測史上最少。西日本は今後も2週間程度は少雨が続くとして、水や農作物の管理に注意を呼びかけた。・・・地点別月平均気温は、岩手県大船渡市が15.3度(平年比プラス1.7度)で最高値を更新。仙台市16.5度(同1.6度)も最高タイ・・・
なのだそうだ。しかし、こんな異常なことを声高に取り上げることもなくなり、注意を呼びかける声すら聞こえてこない。4月22日のRecordChinaによれば、
2009年4月20日、中国で、今まで観察されなかった種類の渡り鳥が越冬するなどの異変が起きている。はっきりとした原因は不明なものの、関係者は地球温暖化や環境悪化が原因の可能性・・・ヨーロッパ原産のマヒワ(スズメ目アトリ科)は、00年に新疆ウイグル自治区西部に位置するイリ市で観察されたものの、同地区内では越冬していなかった。しかし9年後の現在、マヒワは同地区内で越冬しているだけでなく、同自治区省都のウルムチ市からさらに東約へ100kmに位置するジムサル県でも発見されるようになっており、わずか10年足らずの間に居住地区を800kmも東へ拡大・・・馬氏によると、「渡り鳥は通常、冬を暖かい南方で過ごし、春に繁殖のため北に戻るというように、季節によって南北の移動を行う。しかし、近年、マヒワだけでなく、オオカワラヒワやキオアジなど以前は中国で観察されなかった多くの鳥が東へ移動してきており、鳥のこれまでの習性からは考えられない現象が起きている」と語った。こうした状況について、「地球温暖化や環境破壊が原因」と指摘する専門家もいる。・・・「外来種の大幅な繁殖は現地の生態系を破壊するだけでなく、農作物などへの影響も大きい」と・・・
ということだから、注意深く周囲を見渡してみれば、何か今までと違うものが見えてくるのだろう。5月7日のYONHAP NEWSによれば、
・・・南海水産研究所が7日に明らかにしたところによると、2007年から南海西部海域のプランクトン(浮遊生物)を分析した結果、貝類が食べる植物プランクトンの分布密度が減少し、種類も減ったことがわかった。地球温暖化でここ40年間に南海岸の水温が1.2度上昇し、動物プランクトンと貝類のエサとなり海洋生態系の安定的維持にも重要な役割を果たす植物プランクトンの量が減少し、種類の多様性も低下していると分析された。・・・
というように、国境を越え、海陸の区別なく静かに異常事態が進行している。5月21日のロイターによれば、
・・・米マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者らは19日、地球温暖化による気温上昇が、6年前の予想に比べ2倍となる可能性があるとの研究結果を発表した。 同研究では、2100年までに地球の平均表面温度は5.2度上昇する可能性があると指摘。・・・経済モデルの改善と最新の経済データを反映したためだとしている
とのことだから、事態は、一層深刻になってきているのだ。5月24日の毎日新聞によれば
・・・温暖化による高山帯減少も懸念・・・地球温暖化も拍車をかけると懸念される。 気温が上昇すれば、標高の高いところまで森林が広がるようになり、ライチョウの生息地である高山帯が狭くなる。中村教授の試算では、年平均気温が1度上昇すると森林限界は約154メートル上昇し、3度上昇すれば、日本に生息するライチョウの80%が行き場を失うという。・・・
らしい。もちろん、ニホンカモシカの生息数増加による食害も大きいらしいが、そういった生態系の乱れがそこかしこで起こっているのだ。5月24日の産経新聞によれば
15~17世紀の大航海時代の船乗りの間には「サンゴ礁に船が乗り上げると魚が毒を持つようになる」という言い伝えがあった。 探検家のキャプテン・クックも「船が座礁したサンゴ礁で捕れた、無毒のはずの魚を食べて、船員が奇妙な中毒を起こした」と航海記に記している。 シガテラ中毒である。今も世界で年間2万~6万人の患者が発生している最大規模の食中毒だ。 死亡率は低いが、激しい下痢や吐き気、筋肉痛、かゆみなどに襲われる。温度感覚の異常が特徴だ。アイスクリームを熱いと感じたり、水に触れると異常な冷たさを感じるドライアイスセンセーションを起こしたりする人もいる。日本では、サンゴ礁が広がる南西諸島特有の食中毒として知られていた。しかし、1998(平成10)年に宮崎県で釣れたイシガキダイを食べた人が中毒したのを皮切りに、和歌山、三重、神奈川、千葉の各県で相次ぎ発生。発生域は北上し、拡大する一方だ。 シガテラ中毒の発生メカニズムはこうだ。サンゴが死ぬと、残った骨格の表面に石灰藻というサンゴ藻の仲間が生える。そこに毒素を持った渦鞭毛藻(うずべんもうそう)というプランクトンが繁殖し、小型草食魚が食べる。それを大型肉食魚が食べて毒素を体内で濃縮、それを食べた人間が中毒する。 だから、大航海時代の言い伝えのように、船の座礁でサンゴが死んだ海域では、シガテラ中毒が発生するわけだ。 沖縄県衛生環境研究所衛生科学班の大城直雅主任研究員によると、シガテラ中毒の原因となる神経毒、シガトキシンは、フグ毒の70倍もの毒性を持つ。ただ、魚体に蓄積される分量が少ないため、重篤になることはほとんどない。 毒魚となるのは、イッテンフエダイやバラフエダイ、バラハタといったトロピカルな魚が中心で、沖縄県では毎年、2~3人の中毒者が出ている。「自分で捕った魚で当たるケースが多い。おいしい魚なので、可能性を承知の上で食べる人もいる」という。・・・「地球温暖化が一因となっていることは間違いないでしょう」。シガトキシンの発見者でシガテラ中毒研究の第一人者である安元健・東北大学名誉教授は、中毒の発生域の北上現象についてそう語る。 シガテラ魚の発生にはサンゴが不可欠。そのサンゴは温暖化の影響で分布が拡大し、太平洋側は千葉県館山市まで北上している。これに伴い被害も北上しているのだという。確かに、これらはピタリと一致する。それだけではない。海水温の極端な上昇でサンゴが死滅する白化現象も多発している。「石灰藻の生える面積が増え、発生拡大に拍車をかけている可能性もある」というのだ。 さらに、渦鞭毛藻は温暖化で増殖しやすくなっている上に、無毒種の有毒化も推定されている。安元さんは「温暖化が進めば、ますますシガテラ中毒の拡大が懸念される・・・
という話もある。見えざる危機が、着実に身の回りに押し寄せているのだ。5月28日の毎日新聞によれば
地球温暖化に伴う水温上昇で、21世紀末にはサンゴの生息域が青森・岩手沿岸まで北上する一方、南西諸島ではサンゴの大量死を招きかねない水温上昇が毎年のように起こる可能性があることが、北海道大と環境省の解析で分かった。・・・サンゴ生息の北限は現在、新潟県佐渡島や千葉県沿岸だが、約100年後の今世紀末には青森・岩手沿岸に北上する可能性が示された。 また、現在サンゴ礁が存在する沖縄県など南西諸島では、大量死につながる白化を引き起こす水温上昇は今世紀前半まではそれほど起こらないが、今世紀後半から毎年続くことが示唆された。・・・藤井賢彦・北大特任准教授(海洋学)は「サンゴが北上すると、沿岸の生態系が変わる可能性がある。白化や大量死を招くストレス要因は、低塩分、強光など他にもある。・・・
ということだから、すでに不可逆点に近づいているのかもしれない。気がついたときには、人類は食も水も住居も失う・・・・。そんなシナリオが浮かび上がってくる。5月30日の産経新聞によれば
世界中で地球温暖化対策をまったく取らなければ、21世紀末の日本では豪雨の増加や台風の強大化、熱中症による死者などで年間17兆円にも及ぶ追加的な被害が生じるおそれがあるとする予測結果を、環境省が29日発表した。・・・予測では21世紀末までに(1)温暖化対策を取らず成り行き任せにして1990年比で気温が3・3度上昇(2)一定の対策を取って2・2度上昇(3)厳しい対策で1・6度上昇-の3ケースを想定した。 気温が上昇すると豪雨が頻繁に起こり、台風も強大化して洪水や高潮、土砂崩れによる被害が増大する。 洪水被害は現在は年間約1兆円だが、今世紀末にはケース(1)で約8兆7000億円、(3)でも6兆4000億円の追加的な被害が生じる。高潮による浸水被害でもケース(1)では西日本全体で7・4兆円増える。 土砂崩れ被害も今世紀末には現在の約3000億円に比べ、対策の程度によって発生の確率が4~6%増加し、9400億~7700億円が新たに生じる。 また、ブナ林の面積は、今世紀末にはケース(1)でブナ林の約7割が消失し、被害額は2324億円に達する。人への影響でも熱中症のリスクが3・7倍になり、社会的被害が約1200億円増えると予測した。・・・
ということだ。こういった試算は、日本だけで行われているのではない。6月2日の読売新聞によると
来年10月に名古屋市で開かれる生物多様性条約に関する国際会議(COP10)を前に、政府は2日、初の生物多様性白書をまとめた。 熱帯雨林の伐採や地球温暖化などの影響で、地球上の生物約160万種の多様性が急速に失われつつある「大量絶滅時代」と位置づけ、生物種保護への地球規模での取り組みを訴えている。・・・COP10で議長国を務める日本が、絶滅のスピードを食い止めるための世界共通の目標作りに貢献すべきだとした。・・・
とのことだ。大量絶滅時代とは、人間も含めてその生命が危機に直面することを示している。6月2日のRecordChinaによれば、実際に被害をまとめてみると、とんでもないことが起こっていることがわかる。
・・・シンクタンク「グローバル・ヒューマニタリアン・フォーラム」の報告によると、気候の変動により全世界で毎年30万人以上が死亡しており、2030年にはその数は50万人を超える可能性があるという。30日付で人民日報(電子版)が伝えた。報告によれば、地球温暖化の影響を受ける人口は3億2500万人といわれ、この数字が倍増して世界人口(約67億人)の10%に達する可能性もあるという。加えて経済損失も甚大で、現在は1250億ドル(約12兆円)を超えており、2030年までに3000億ドル(約28兆6000億円)になる・・・アナン前国連事務総長は、この問題が温暖化について歴史的責任のない貧困国に影響を与えると指摘する。発展途上国は地球温暖化による経済面・人口面での悪影響の90%を受けるが、彼らが排出する温室効果ガスは全体のわずか1%であるという。だからこそ今年12月に開催されるコペンハーゲン会議(気候変動枠組条約締約国会議)で、京都議定書に代わる効果的で公正な協議を成立させる必要があると述べ、協議が不成立となった場合、飢餓・病気などを多発させる道を選択したことになると強調・・・地球温暖化抑制に関する投資は100か国の発展途上国で倍増する必要があるという。現在は毎年4億ドル(約380億円)の拠出だが、試算では実際のコストは毎年320億ドル(約3兆円)にも上る・・・
地球温暖化は、世界大戦規模の破壊をもたらしていく。そのことを忘れてはならない。そして「地球温暖化」を阻止することは、単なるファッションで終わらせてはならない。ブームが去ったら取り上げないというのでは、困るのだ。
新型インフルエンザを嵐のように取り上げたマスコミは、現在沈黙してしまっている。エジプトでH5N1型が多く発生していることを取り上げることもない。そういえば、アフリカについては、何とも情報が出てこない。人類発祥の地は、砂漠化によってかつての豊かな大地から過酷な暗黒の大地に変貌し、人類の北進を招いたとされている。そこで今、何が起こっているのかほとんど分からないというのも困ったものだ。